そっと目を閉じて耳を澄ます。


ザザザザザッ…
ザザァ…



打ちよせては返す波の音は、ホントにどこかホッとする音。




ザザザザッ…
ザザァ…






肩に置かれていた幸谷君の手に力が籠ったと思った瞬間、唇に触れた優しい形。





驚いて目を開くと、目の前に幸谷君の顔があった。

少しだけ目を伏せたまま私にキスをしてる幸谷君の表情にクラクラした。

少し唇が離れたかと思って、大きく息を吸いこもうとした私に、間髪を入れずまた合わせられた唇と、舌がさしこまれた事実に私は頭の中がパニックになった。






クチュックチュッ…

耳に届くキスの音。





ザザザザザッ
ザザァ…

相変わらず聞こえる波の音。






その全部に私は囚われてカラダが動かなかった。






厭らしいキス。

こんなキス初めて。





でもカラダがフワフワして気持ちいいのは誤魔化せない。






チュッ…





少しのリップ音を残して離れた唇がどうしようもなく寂しく感じた私は、浅ましい。

それを覚られるのが恥ずかしい私は、そのまま幸谷君の胸を押し退けて、「海、入ろうっと。」と、海の中へと砂浜を駈け出した。