それでも私に絡まる腕を解いてくれない幸谷君に心臓が飛び出ちゃいそうなくらいドキドキして、息も上手く出来ない。







「お前、の、そんな格好俺以外の男に見られたら、俺、発狂しそうや…」






そんな格好…って、この水着の事ですか?






えええ…。

でも、この水着買う時莉子ちゃんが言ってたよ?

『幸谷先輩は、サーフィンしてたりするくらいで年中海行ってるし、特に夏ら、郁ちゃん達とナンパ三昧やから、色んな女の水着やなんて見慣れてるしな…。

特別露出多いからって、ビビることも無い気するし…。

裸の女でもどんって来いって感じやしな…。』


莉子ちゃんの言葉を思い出しながら、幸谷君の今私に向けられてる言葉にくすぐったいのに、疑問を感じた。







「…あたしの水着、そんなにダメなの?」






幸谷君の胸を両手で押して、少しカラダを離した私は、疑問をぶつけてみた。






「ダメやない…っていうか、ダメやけど、ダメやないねん。

だぁぁぁぁぁ。

訳わからん…。

水着も愛もめっちゃ可愛いねんけど、…でも、あかんて。。。」






長い前髪をまた、指先で弄る幸谷君。

この仕草をするときの幸谷君は、すごく戸惑ってる時に見せるもの。

眉を八の字に下げて、困った表情を見せる幸谷君は、まるで大型犬みたい…。

耳を垂らして項垂れてる感じに、可愛い…なんて思ってしまう私。

自然と口を吐いた言葉。






「幸谷君…、可愛い…(笑)。」






そう呟いた私の言葉に幸谷君の表情が一瞬で変わったのがわかった。






「誰が、可愛いんて?」






私の顎をクイッと掴んだ幸谷君が、さっきまでの可愛さなんて微塵も感じさせない表情に変わって右の口端を上げた。