「愛ちゃん、明日、おばあちゃんね、退院して来るからね。」
夕食は、ママと一緒に作ったハンバーグ。
チーズが入ったデミグラスソースのハンバーグはウチの定番メニュー。
「ママと一緒にお迎え行っていい?」
「パハはお仕事休めないから、二人でお迎え行こうね。」
パパ、忙しいもんね…。
でも、嬉しい。
おばあちゃんが帰ってくるんだ。
トゥルルルルルル…トゥルルルルルル…
「あ、電話だ。」
ママが席を立って受話器を耳に当てた。
私は、サラダのプチトマトを口に入れながら、明日おばあちゃんにどんな退院祝いを贈ろうかと思い巡らせていた。
確か、タオル地のハンドタオル新しいのあったはず…。
そうだ、刺繍しよう。
どんな模様が良いかな…。
「…ぃちゃん…、愛ちゃんッ、電話よ。
幸谷君よ。」
ママの少し大きい声にカラダをビクつかせた私は、ママから差し出されたコードレスの電話をおずおずと受け取った。
「ホントにポーッとしてるんだから、愛ちゃんは…」
ママの呆れたような声に、顔を顰(しか)めつつ、幸谷君からの電話に胸を躍らせた。
「もしもし…?」
『あ、俺やけど…。
ごめん、なんか忙しかった?』
「ううん…。」
ママの視線を避けるように私は、ダイニングから外に出た。
そして、受話器を耳に当てたまま、階段に腰を下ろした。