手を引かれて座った、一番後ろの座席。
窓際に私を促した幸谷君が、ドカッと大きく足を開いて、隣に座った。
手は繋がれたまま…なのが、気恥かしいのに、嬉しくて…
人前でイチャイチャするとか私の中には存在しない行動だったのに…
「幸谷くん?」
「ん?」
眠そうに目を閉じかけていた幸谷君が、私を見た。
「ありがと…ね。」
「…なにが?」
「…送ってくれて。」
目を閉じた幸谷君が、口角を上げて微笑んだ。
「ええよ。
俺が送りたいんやから。
気にせんと、送られればええよ、お前は。」
どうしてかな…。
幸谷君に言われる“お前”は凄く心地いい。
繋いだ手。
絡んだ指先に少し力を込めると、握り返される。
窓の外は、いつもと同じ風景なのに、全然違って見えるのは、気の所為じゃないね?