恋を知って

悲しい想いや、切ない気持ちを知る。

見上げた空は青くて、

運命に引き寄せられた私は、今、繋がれた手を信じたいと思った。






男の子と手を繋いで歩くのは初めてで、胸がキューっと甘く締めつけられた。

幸谷君の手は、大きくて優しくて、私の中をどんどん幸谷君でいっぱいにしていった。

今朝、知りあったばかりなのに、

急速に惹かれる理由はわかんないけど…





ただ、幸谷君の声にも、姿にも、行動にも、全部に私は惹かれていた。





また、一つバス停を通り越す。

次のバス停まで、もう少しだけ…と願う。

上手くおしゃべりも出来ない私なのに、厚かましくも幸谷君の隣があまりに居心地良くって、もう少し、このままで…と、心が勝手に動く。






初めての恋。

初めて…の感情。







なのに、無情にも幸谷君の声は、淡々と終わりを告げた。







「丁度、バス来たし。

こっから駅までバス、乗るか?」






一つ向こうの赤信号で停まってるバスが見えた。







「あ、うん。

ありがとう…」






ここでさよなら…か。

寂しい。

胸がギューッと押し潰されそうに軋んだ。

でも、ここで、今日は、バイバイだよね。






バスが停まって扉が開いた。






繋いだままの手を離そうとした私。

それをまた繋ぎなおした幸谷君が繋がっていない方の手で鼻を擦ったのが見えた。







「家まで、送らせて?」






私の返事も待たずに幸谷君は私の手を強引に引っ張って、バスの中へ、乗り込んだ。

一緒に…。