「でも、桜台の近くにそんなショッピングモールなんてあったっけかなぁ?」
「近くって言うか…。
あそこ、なんて言うんだったっけ…。
映画館も隣接されてる…とこで、ね。」
なにぶん、最近こっちに来たばかりの私は、全く地理に詳しくない。
「あ、わかった、そこってゲーセンもデカいのあるやんな?」
幸谷君の声が弾んだ。
でも、私は、ゲーセンがあるのかどうなのかわかんない。
「…たぶん…、あると思う…。
あ、大きな本屋さんあるよ。東京にも同じ系列の本屋さんあるからお店の感じ似てて落ちつくから、良く行くの。」
「あ、愛って、東京から来たん?」
私の顔を覗き込んだ幸谷くんが優しく微笑んだ。
優しい笑顔に、また、胸がドキンと高鳴った。
「う…ん。
春に越して来たの。」
「そっか。
…こっち、慣れたか?」
「うん、みんな優しいから。」
「そっか。
それは、ええな。」
繋いだ手はそのまま。
温かい優しい手。
優しい声。
「…幸谷君のお家は、この駅から遠いの?」