夕暮れの公園。
錆びれたベンチ。
小学生の子供の声を遠くに聞きながら触れた唇は、暖かくて、余計に涙が零れた。
「うわぁ、チューしてる。」
小学生の茶化す声に、素面に戻る。
恥ずかしくて、俯いた私の腕をグッと掴んだ幸谷君が、私を胸の中におさめた。
「お前ら見てたん?」
幸谷君の冷静な声に、私は、余計顔を上げられず、心臓が口から飛び出るほどドキドキしながらも、幸谷君の胸に顔を埋めたままだった。
咽かえるような甘い幸谷君の匂いが私の中をいっぱいに侵食して、キューっと胸が締めつけられた。
感じたことの無い痛みは甘い痛み。
耳の奥、喉の奥、全部を襲う。
「まだ、見てるんか?
もっと、エロいチューやるから、見てるんやったら見てろや。
でも、金、取んで?」
低い声の幸谷君の表情は見えないけど、パタパタと足音が段々小さくなるのが聞こえた。
「愛?」
幸谷君の私を呼ぶ声が優しいのに、恥ずかしくて、私は、グッとその胸を押し退けた。
その押し退けた腕を掴んだ幸谷君が、「逃げんで…よ。俺、どんな風にシてええんか、わからへんねん。」と、か細い声で呟くから、私は、その手を振り払うなんて出来なかった。