「愛子は、俺の女や…。
コイツの事を俺が好きなだけや。
コイツにくだらん嫌がらせとかしたら、お前ら、潰す。」
怖い…。
怖い…。
「ウチかて、幸谷の事、好きなんよ…。」
とうとう泣きだした女の子に、耳を塞ぎたくなる。
綺麗事でも、何でも良い。
この場に居たくない。
人が傷つく姿を見たくないと心底思った。
「勝手に人のこと好きとか言うてんなや。
迷惑なだけや。」
幸谷君の言葉は辛辣で、心を抉(えぐ)る。
「酷い…」
成す術も無い私…。
ただ、この場から去りたかった。
人の感情が自分の中へ入ってくる嫌悪感を感じて、心が泣いた。
そんな私に気付いたのか、幸谷君が繋ぐ手に力を込めた。
大丈夫…
そう私を宥めるように…
「…俺、コイツしか、要らん…ねん。
もう、話しかけんな。」
泣いてる女の子の傍を横切る幸谷くんと私。
私は、苦しい気持ちをただ、持て余して、やるせなかった。
それでも、幸谷君の手を離せないのは、私も、幸谷くんの優しい温もりが心の拠り所だったから。
「嫌な想いさせてごめんな…。
初めて一緒に帰んのに…。
マジ、ごめん…」