「なんで、泣いてんの?」
俯いた顔を上げられない私。
掴まれた腕が熱い。
反対の手が伸びて来て、私の涙をそっと拭ってくれた。
「…どっか、痛いん?」
首を横に振る私に、幸谷君の声がまた、届く。
「どこ行こーとしてんの?
俺、迎えに来る言てたやろ?」
黙ったままの私に小さくため息を吐いた幸谷君が、「ここ、めっちゃ目立つし、取り敢えず、行くぞ。」と、私の手を引いて正門の方へ歩き出した。
繋がれた手。
大きな手は、私の手を包んでしまう。
「なんで、そんな女なん?」
刺々しい声は、震えてる。
私は、その声の方を見ることなんて出来ない。
きっと、さっきの女の子…。
「そんな女ぁ…?」
低く響く声は、怒りを含んでいるのが私にもわかる。
幸谷くんの声が怖い。
「…ウチの方が、幸谷のこと、好きや。」
幸谷君の事を好きな女の子は、きっと、私の存在が許せない。
勝手に震えるカラダ。
嫌だ…。
怖い…。
辛い…。
苦しい…。