上履きから、ローファーに履き替えて、正門へと向かう。
ドキドキ
苦しい。
でも、嬉しい。
駆け寄ろうとした時、目に入ったのは、幸谷くんの傍に立つ、二人の女の子。
確か、この近くの商業高校の制服。
だけど、短い丈のスカートに、巻き髪が煌びやかで私と違う存在に、まだ、色んなことに不安定な私は、怖気づいた。
足が前に進まない…。
幸谷くんの肩に触れるその女の子達の指先に、胸が苦しくなった。
ドキドキする痛みじゃない。
ズキズキする鈍痛は、私を戸惑わせた。
どうしよう…。
ひょっとしたら、幸谷くんは私を待ってくれてるんじゃないのかもしれない…。
そう頭を過った時、私は、正門に背中を向けた。
裏門から…帰ろう…。
きっと、幸谷くんは、私じゃなくて、さっきの女の子と約束してたんだ…。
痛む胸。
込み上げる涙を我慢してる所為で、鼻の奥がツンッと痛む。
なんで、涙なんか出るの…。
勝手に溢れそうになる涙は、私の視界をぼやけさせる。
早く、帰ろう…。
零れた涙を手の甲で拭った時、右腕にグッと、圧迫感を感じた。
そして、フワッと鼻孔をくすぐる甘い匂いと煙草の匂いを、知って余計に涙が溢れた。