綺麗に笑う先生。
メタルフレームの眼鏡が似合う先生は、一見冷たそうに見えるけど、ホントは優しいんだなと、思った。
「高杉、手、出してみ?」
先生の前に座っていた私に先生が微笑んだ。
おずおずと右手を差し出す私に、先生が「良いものやるわ。」と口角を上げた。
「ほら、これやる。」
白衣のポケットからイチゴミルクのキャンディーを二粒取り出して私の掌に乗せた。
「いつでも、ココにおいで?
疲れたら、さぼりゃいいよ。
あ、他の生徒には内緒だからな。」
先生の言葉は優しくて、私のいろんなことに緊張していた心が解き放たれるようだった。
そう言えば、女子が騒いでたな…。
保健室の先生、カッコいいって。
確か、山下先生…って言ってたな。
「山下先生、ありがとう…」
「ん。
その飴食って、寝とけ?
無理に頑張んなくても良いから。」
「…チャイム鳴るまで、本読んでても良いですか?」
遠慮がちに聞いてみると先生が笑った。
「カーテン閉めたら何してるかわかんねぇよ。」
椅子ごとまた、クルッと机に向きを変えた先生は、そう答えてまだ、何か書き始めた。
私は、先生の背中に小さく一礼をして、窓際のベッドに座った。
カーテンを引いて…(笑)。
鞄から本を取り出して、また、ページを捲った。
でも、どのページを開いても、浮かぶのは、幸谷くん。
ドキドキ鼓動が早くなる。
この甘い痛みを誤魔化したくて、先生に貰ったキャンディーを一粒口に含んだ。