開いたページの詩は、大好きな詩。



唇をキュッと結んで、本から視線を外して、前を見た瞬間、ドキンと、胸が大きく震えた。



目だけで追う詩集。

さっきの熱はまだ冷めない。

詩集に目を這わせるのに、頭の中に浮かぶ幸谷君にまた、熱が増す。

ホッペを押さえて、小さく深呼吸してみたけど、胸の痛みはなかなか取れない。

もう一度、本に目を落とす。

大好きな詩。

大好きな言葉。

その簡潔且つそれで居てシュールな詩に引き込まれ、詩と添えられてる写真に思いを巡らせて、切なくなったり、悲しくなったり、温かくなったりする気持ちが心地よくて、東京での通学途中も毎日読んでいた。

何度も同じのを読むから、好きな詩は、ほとんど覚えちゃってる。

中でも一番好きなのは、今、目の前にある夢の嵐という詩。

まだ知らない恋の詩。

………
…………

 夢は
 嵐のようだったのに。
 熱い陶酔に
 胸がふるえたのに。

 恋はどちらかを
 いつも置き去りにして 
 先へ進んでいく。
 すこし遅れた時に 
 私があなたをつめたいと思い
 すこし遅れた時に 
 あなたが私を気紛れだと言った。

 私たちは結ばれない恋だった。


………
…………



この詩を見た時、心が震えた。

結ばれない恋なのに、恋を知りたいと思った。





恋を知ったら、私はどうなるんだろう…





また、幸谷くんが頭に浮かんだ。





ドキドキして、苦しかった。





また、胸がキュッっとなって、甘く痛む。






 夢は
 嵐のようだったのに。
 熱い陶酔に
 胸がふるえたのに。





熱い陶酔に胸がふるえた…




私は、今、幸谷君を想って、胸が震えた。




これを恋と呼ぶのでしょうか…。




私は、まだ、それすらわからないのです。







act1.一目惚れ…恋…end