ステージが終わって、体育館から出た時、雅斗くんが私の目元に指をそっと乗せた。
「郁の歌ら(歌なんか)に泣くなよ。」
乾き切らない涙を指先で拭われた。
触れる指先は優しいのに、雅斗くんの言葉がどこか拗ねていてそれが可愛くて笑みが零れた。
「…なんで、笑うん?」
「だって(笑)。」
「お仕置きすんぞ。」
「ヤダ(笑)。」
「ヤダ、やない。」
私の首に腕を回して、「ヘッドロックぅ。」なんてふざける雅斗くんが楽しくて、ケラケラ笑う私。
優しくて楽しい
雅斗君と過ごす時間は胸が暖かくて苦しくて切ない。
恋…してる。
実感する。
雅斗くんが大好きだって。
甘い時間…
「いちゃこき過ぎやっちゅーの。」
ゲラゲラ笑う声と言葉に、私は固まった。
その私のカラダをそっと後ろへ隠すようにした雅斗くんが、「なんやねん、お前ら。」と、ため息交じりに声を低くした。