「えーっと、今日は、ありがとうございます。
最後に、一番の親友に曲をプレゼントします。っていうか、そいつが彼女の為に作った歌を俺が、くすねて、ここで披露しちゃいます(笑)。
めっちゃええ歌で俺、感動して。
その親友は、見かけ厳つくてクールな男決めてますが、彼女に一目惚れして以来超ヘタレさ加減炸裂の情けない男でね、俺よりギターも上手いのに、一緒にバンド組むの誘ってもかたくなに拒否する頑固者やねん。
まあ、その男は誰かは想像に任せるとして、じゃ、歌います。聞いてください。」
アコースティックギターを抱えた郁君が歌い始めた歌。
それは、雅斗くんが私に聞かせてくれたあの歌だった。
優しくて甘い…
そして切ない曲に涙が自然と零れた。
雅斗君がピタリと私に寄り添ってきた。
触れた肩が暖かい。
そして、「あいつ、最低やな。パクリやがった。」って恥ずかしそうに耳元でささやかれた言葉が、もっと暖かくて幸せ…だと。
薄暗い体育館の中。
埃臭さや
熱気や
全部をきっと一生忘れられないと思った。
雅斗くんの声を重ねた。
雅斗くんが作った歌。
私の事をと聞いたこの歌に涙を止める術が無かった。
「雅斗君…」
「…ん?」
「…ありがと…」
「あー、ん。」
雅斗くんが私を見つけてくれた奇跡に感謝した。