「愛、行くぞ。」
雅斗くんが私の腕を掴んだまま、校舎の方へ歩き出した。
私はそれに引き摺られるように「七原君、ありがとう。じゃあ、ね?」と少し振り返って声をかけた。
迷惑かけちゃった…ね。
ごめんね…と心の中で呟きながら、雅斗くんの後を早歩きになりながら着いて行った。
ガチャガチャッ…
キィ…
鍵を挿し込んで開けた扉。
扉を開け放った所為で、差し込む光に光る埃がキラキラ散りばりながら舞うのが見えた。
それは、少し薄暗い部屋の中に日中の明るさを知らしめた。
ふわりと、甘い匂いが私を包んだ。
首筋に当たるふわふわした雅斗くんの柔らかい髪がくすぐったい。
「めっちゃ、探したんやで…」
「……。」
「こんな男ばっかの場所、来て要らんかったんよ。
俺、めっちゃ小さい男やねん、よ、お前に関して。
カッコ悪いんわかってるんやけど、あかんねん。
気持ち、セイブ出来へん。
好きやねん。
お前の事、どーしようもないんよ。
自分でも怖い…んよ。」
胸がギューっとさっき七原君に感じた苦しさの何倍もの苦しさを感じた。
でもそれは嫌な苦しさじゃない。
雅斗くんにしか感じたことのない甘い痛み…。
愛しくて切ない…。
「私は、雅斗くんの学校が見たかったの…。
雅斗くんのこと…、いっぱい知りたかったの…。」