「なんで、来てんの?」






少し低い雅斗君の声が不機嫌さを見せるから、戸惑ってしまう。






「…雅斗くんの居る学校…、見てみたくて…。」






「なんで、俺になんも言わんの?」






「…驚かそうと、思って…」







私の手を握ったまま大きな歩幅で歩く雅斗くんに私は自然と小走りになってしまう。

チビの私と大きな雅斗くんとじゃ、取り敢えずコンパスに差があり過ぎるんだもん。






「お。

雅ぁ、姫連れて来てたんかよ。」





声の方へ眉を顰めた雅斗くんが「あ”?」と低い声を投げた。






あ、郁君。

あんまり話したことも無いけど、顔は覚えてる。

雅斗くんに負けず劣らずのカッコいい人…。





「怖~。

姫~、後で、体育館来てな?

ライブやるから見てよ。」






怖いなんて言いながら雅斗くんと私の傍に来た郁くんが私の頭をそっと撫でた。

その手をバシッと叩き落とした雅斗くんが「触んな。」と、また、一層低い声を郁君に向けるから私はおどおどするばかり。