黒い学ラン。
そこから感じる甘い香りは、香水と雅斗くんの匂いが混じってる私の大好きな匂い。
「こいつ、俺んやから触んな。」
見上げた先にある雅斗くんの綺麗に整った眉が顰められていて、ゾクッとした。
かっこいいな…と、どこか客観的に見てしまう私。
こんなカッコいい人が私の…彼なんだ…と、不思議な感覚に陥った。
「お前らが愛子、ここ連れてきたんか?」
雅斗くんが沙穂ちゃん達に向ける瞳が少し冷たくて、「ち、がうよ。あたしが行きたいって言ったの。」と、雅斗くんの学ランの裾を引っ張る私に視線を落とした雅斗くんが、小さく溜息を吐いた。
「…愛子、借りんで?」
どうしてそんなぶっきらぼうな言葉ばかりなの?
沙穂ちゃん達困ってる…よ。
「どうぞ、どうぞ、煮るなり焼くなり、幸谷先輩の好きなようにしてください。」
へ?
沙穂ちゃん…
何、言ってんの?
「愛子、今日は、幸谷先輩に可愛い思って貰おうと思って、めっちゃ今日の服選んだみたいですよ~?
愛されてますね、先輩(笑)。」
すごいよ、沙穂ちゃん…。
物怖じしない沙穂ちゃんに、ホッとしながらも、沙穂ちゃんの余計な言葉が恥ずかし過ぎて私は真っ赤になっただろう顔を見られるのが嫌で、俯いた。
私の腰に回った手が離されたと思ったら、右手が暖かくなって、指が絡められた。
「じゃ、連れてくわ。」
言葉が少ない雅斗くんだけど、声が優しくて、胸がキュンっとした。
大事にされてる自分が幸せだと
こんなに好きな人が自分を思ってくれてることが嬉しくて
「みんな…ありがとね。」
私の言葉に大好きな友達たちは優しい笑みを湛えてて「キングに喰われちゃえ。」なんて茶化しながら、手を振ってくれた。