掴まれた腕が熱い。

声の低さ。

言葉の強さ。

強引さも

全部が怖いのに、私は、何故かその手を振り払えなかった。






「こっち、向いてくれへん?」





優しい声に視線をもう一度上に向けると、思いっきり視線が絡んだ。




また、時が止まった気がした。




なんて綺麗な瞳なんだろう…。

茶色が綺麗…

吸い込まれそう…

吸い込まれたい…




一瞬下を向いた幸谷くんが、眉を八の字に下げた。






「そんな、怖がらんとってよ。

高杉さんの事、俺、怖がらせたない…」






少しだけ困ったような声。

私は震える声を隠せないまま、言葉をぶつけた。






「…幸谷くんは、あたしのなにが…いいの?」






「何が…って、ん、そーやな…上手いこと言われへんけど…。

初めてなんや。
こんな気持ち…俺。

上手いこと言われへん…わ。

好き…だけやったら、あかんかな?




…高杉愛子さん、俺と付き合って下さい。」






真っ直ぐな瞳が綺麗で、私は無意識に頷いていた。






「マジで?」





頷いた私に、目を丸くした幸谷くんが、聞き返してきた。

聞き返されて戸惑う私の腕を引き寄せて、ギュッと抱きしめられた。






「好き…や。」





恥ずかしい。

でも、胸がキューっと痛んで、息苦しくて

言葉なんて出ない。





心地良い硬い胸と、私を包む優しい腕に私は、ただ、離れたくないなんて思った。

今日、知ったばかりの人なのに…。





傍に居て欲しいと、思った。