「…雅斗君の作った歌?」
「ああ、ん。
まだ、誰にも聞かせたこと無いねんけどな。」
よっこいしょ…なんて、のそのそ私の膝から起きあがった雅斗君が、眠そうなまま瞼を擦って立ち上がった。
そして、徐にギターを手に取って私の後ろ側に座って、背中を合わせてきた。
「真正面から見られたらめっちゃ照れてまうから、こっちからな?」
背中と背中…
温かい。
アコースティックギター。
雅斗くんの手で奏でられてるだけで胸が熱くなる。
~♪♪
本当の僕を見てよ…
本当の夢を見せてよ…
この世界が嘘や憎しみに
満ちていたとしても
目の前にあるこの小さな温もりは本物だよ…
~♪♪♪~
自然と溢れた涙。
雅斗くんの低く甘い声と、シンプルなギターの音色とが、見事にマッチングしてる。
色んなことが描かれてるように見える詞は抽象的なのにリアルで、優しいのに悲しくて。
全部が私の中に入り込んできて、膝に顔を埋めて私は泣いた。
背中越しに感じる雅斗くんの存在が今にも消えちゃいそうに思えて、苦しかった。
私に見せる心の闇を全部、受け止めたいと思った。
愛しい。
男の子をこんなに愛しいなんて…
初めて知る感情に、私はただ、涙を流した。