「…ギブソンJ-50って言うんよ、そのギター。」
「え…?」
膝の上の雅斗君に視線を戻すと、眠そうに薄く開いた瞳で私を捕えた。
「って、ギターの種類ら愛子、わからんよな(笑)。それ、親父の形見やんねん。」
淡々と呟いて雅斗くんはまた目を閉じた。
「お父さんの?」
「ああ…、ん。」
「…そっか…。」
上手な言葉も接し方も思いつかない。
静かな沈黙。
窓の外は夕日が落ちて暗い。
秋の夜は早い。
…寂しい。
ふと部屋の中にある時計を見ると、午後6時20分…
そろそろ…帰んなきゃ。
塾行かなきゃ…。
帰りたくない
傍に居たい
でも、ダメ。
頭の中、それが堂々巡り。
そんな私に雅斗くんの穏やかな声が入りこんできた。
「…なあ、俺の作った歌、聞いてみる?」