玄関には少しくたびれた黒いエンジニアブーツと、黒いコンバース。

壁に掛けられたキーケースは、ステンレスの無機質感がスマートで雅斗くんにぴったりだと思った。






「あ、このキーフォルダー、晃司さんのと似てるね?」






掛けられていたいくつかの鍵の中、目に付いたスカル。

一つ間違えば、カッコ悪く感じちゃうそれなのに、晃司さんの持ってたのと似てるこのキーホルダーは、ごつくて男の子っぽくって、凄くカッコいい。

あの日、晃司さんから手渡されたバイクの鍵に付いていたキーホルダーがカッコいいなと漠然と思った記憶が、今重なって、雅斗くんに言葉を向けた。

そんな私に、「あー、これ、キモイけど、郁も同じの持ってんねんよ。兄ちゃんのハワイ土産やねん。ってか、兄ちゃんも同じの持ってるんは、ドン引きやでな。」と、かかったままのそのキーホルダーを指先で弾いた。

言葉は憎たらしいのに、晃司さんとか郁くんとかとの深い絆が見えて、少しだけ羨ましいと思った。

私と雅斗くんは、まだ、始まったばかりで、すごく不確か。







「なあ、早く靴脱いで入れよ。

俺、めっちゃ腹減ってんねんけど。」







先に玄関に靴を脱いだ雅斗くんが買ってきたスーパーの袋を少し掲げた。

その仕草がやっぱり可愛くて、私は、自然と緊張が解けた。







「うん、最速で作るね?」






「最速かよ?(笑)。」





「うん、最速。」







脱ぎ散らかした雅斗くんの靴を揃えて、その横に自分のローファーを並べてみた。

少し汚れてくすんでる黒い革靴は大きくて、妙に胸が昂った。

それに並んでる自分の靴の小ささが雅斗くんに守られてるみたいでまた胸がキュンっと音を立てた気がした。