一言一言に胸が苦しくなる。

ぬくぬくと暖かい家族の愛を一身に受けて育ってきた私なんか到底理解出来ない悲しみとか寂しさ、切なさをこういう時垣間見て、心の奥底でズキンッと鈍い痛みを感じる。







「美味しいかは…わからへんけど、何作ったらええん?」






へたくそなアクセントになる私。

まだ口にするには慣れないこっちの言葉で、精一杯幸谷君に私の中に芽生える切なさを隠す。

ギュッと繋いだ手に力を込めて、「幸谷君は、一人じゃないよ。あたしが居るよ。」と心の中でそれを伝える。

それしか出来ないから。







「…ハンバーグ、食いたい、わ。

手造りのハンバーグって俺、食うた事無い。」






綺麗な横顔。

夕日に染まって蜂蜜色の髪がもっと明るく見える。

綺麗な二重のラインが伏せた瞼の所為で鮮明に見える。

その下の小さな黒子に、無意識に指先が動いた。






「…いっぱい、食べて?

ハンバーグは私、得意だから、ちょっと期待してて?」






そっと触れた黒子。

それに一瞬ビクッとした幸谷君が目を細めて私の這わせた指先をそのままに指をそっと握った。





そのまま見つめ合う。




どうしてこんなに私はこの人が愛しいんだろう…





恥ずかしいとか

大胆とか




こんな道端で…






「好き…だよ、」






そう伝えた私からスッと視線を外した幸谷くんが、俯いたまま前髪をパサッと散らした。

そして、「…あんま、可愛いこと言わんとってくれへん?ヤバいんやって。」と、上目遣いで私に視線を戻した。