ゲラゲラ笑う集団。
私は改札を通り抜けて、視界にその集団を映さないように通り過ぎようとした。
気の所為かもしれないけど、この集団は、私を見ると、急にニヤニヤして笑ったりする。
それに、いつもは、エスカレーターの向こうにある自販機の傍に屯してるのに、今日は、こんなに近くで、凄く嫌だと思った。
「姫やで、雅ぁ、姫来たで」
「こっち、見てぇや、高杉愛子ちゃ~ん」
なんで、私の名前、知ってるの?
気の所為じゃなかったんだ…。
自分の名前を呼ばれ所為で、足を止めてしまった私に言葉が続く。
「待ってて良かったなぁ。
今日は、いつもより、一本遅かったんやん。
愛ちゃん、休み違て良かったな、雅斗(笑)。」
「煩ぇ…」
「煩い言う割に顔にやけてるやんけ?このムッツリが。」
「殺すぞ。」
「雅君怖ぇ(笑)。」
私を見てニヤニヤするその男の子達に、意味もわからずただ、怖いと思った。
それで、前も見ず俯き加減になった時、慌てて走って来たサラリーマンが私に勢いよくぶつかって来た。
あまりの勢いに私は思いっきり前のめりになった。
…うわ、転んじゃう…
そう思った時、カラダがフワッと浮いた。
「大丈夫か?」
耳元で、聞こえた低く優しい声。
鼻を霞める甘い香りと煙草の匂い。
目の前は、黒…。
鼓動が早い。
カラダが熱くなった。
目の前の黒は、学生服。
「ご…めんなさい…」
慌てて、その胸を押した。