彼はいつものように、少し俯いて静かに寝息をたてている。

かっこいい…。

膝の上に置いている鞄をギュッと抱きしめ、彼をまじまじと見つめているあたし。

滝谷律<タキヤリツ>、16歳。
時岡女学院の一年生。

目の前にいるのが、
名前も学校も知らないが
あたしの好きな人。

女学院という事もあり、
なかなか恋愛などする
機会なんて少ないあたし。

こんな貴重なチャンスを
見逃すわけにはいかない。

声をかけてみよう!と
頑張ってみるものの…
結局はあたしの中でストップがかかってしまう。

今日こそは…!

あたしはまた、いつものように小さく心の中で決心した。