恐らく、ティー同様にボタンに興味がわいたのだろうが…この最中、密着されたライの頭の中はなかなか大変な事になっていた。


(…違う…違うよ…これは不可抗力…不可抗力…不可抗…不可………た、たかが女の子一人になんでこんなドキドキしないといけないんだ…。…この子はサナじゃないか…そう、サナ…サナだから…サナ…。…………………………女の子って、こんなに柔らか……落ち着け、僕の、魂!)


普段の世話で彼女を抱えたりおぶったりと何度も接触しているくせに、こんな時になって“女の子のサナ”を意識してしまうとは、どういう事だこれは。

…しかも今は怒る者も突っ込む者も誰もいない。独りで乗り切るには酷過ぎやしないだろうか。

誰か来て。そして口笛と共に茶化して。殴って。なじって。本当にお願い。
今なら軽いマゾにでもなれる気がする。



サナが寄りかかっている左半身だけが熱を持ち、おまけに痺れてきたのを感じながら、ライは苦行にでも耐えているかの様に硬直していた。
時折鼻をくすぐる香りにどぎまぎする。

物凄く今更だが、ああ…自分はただの青少年だったな、でもまさかこんなに初々しい反応しか出来ないなんて…と、女の子一人にあたふたしている自分の未熟さにほとほと呆れていた。
きっと自分の顔は今、有り得ないくらい真っ赤に染まっている事だろう。茹で蛸も驚きの赤さ。


天井を一心不乱に見上げたまま悶々と動けずにいる可哀相なライの心情など…当たり前だが露ほども知らず、寄りかかっていたサナはライの手元にそっと手を伸ばした。

きめ細かい色白の手が重なると、びくりと大きくライの身体が跳ねたが、サナは気にもせずペタペタと彼の手を触り続ける。

興味があると思っていたボタンには、何故か触れようともしない。ただただ、自分とは違う赤褐色のライの手をしげしげと観察している。

…何かおかしい、とようやく気付いたライは、若干緊張で震える声をサナに恐る恐る掛ける。

「………サ、サナ?」

「…うーぅ」