沸々と泡の様に浮かび上がる疑問は尽きず、考えれば考える程に滅茶苦茶に絡み合い、ライはお手上げと言わんばかりに深い溜め息を吐いた。

一石二鳥を望みたいところだが、問題は一つ一つ解いていった方がより確実だ。
今は敵陣に潜り込んでいるであろうロキの報告を待ち、そしてボタンに関しても同様にオルディオの帰りを待つべきだ。

同じ頃にレヴィもこの隠れ家に来ると思うが、そう言えば彼はこの間何処で何をしているのだろう。

不在の仲間達を思い出しながら、再度ぼんやりと摘んだボタンを眺める。
…すると、脇から真っ赤な子猫がスルリと潜り込んできた。小さなボタンの反射光がティーの好奇心をくすぐったらしい。

猫じゃらしじゃないんだよ、と呟きつつライはすり寄ってきたティーに顔を向けた。






…途端、脇に傾けたライの視界に、いつ真後ろに移動していたのか…至近距離でこちらを見詰めるサナの顔が飛び込んできた。



「………おおうっ!?」

変な声を漏らして思わず仰け反るライ。
サナは肩口からこちらを覗き込んでいたらしい。
先程まで隅の方でティーと戯れていた筈なのだが…音も気配も無かった。気が付けば真後ろでぼーっとしている事が多いのだ。
たまに思う。サナはただ者ではないと。

悪意の無い無意識の不意打ちにも驚かされるのだが、それ以上にその綺麗な彼女が吐息が掛かるほどの至近距離にいる事が一番心臓に悪い。

(……な…慣れないなぁ…)

変な冷や汗を拭い、ライはサナに苦笑いを浮かべる。
今もそうだが…何処から見ても人形の様に美しいこの美少女を前にすると、なんだか妙に緊張して目が泳いでしまう。

甲斐甲斐しく世話をしている時はそうでもないのに。




そのまま相変わらずじっとライを凝視していたサナだったが、真っ黒で無垢な視線は、不意にライの手元に移る。
自分を落ち着かせるためにライが置いた距離を、サナはあっという間に埋めてしまい、ピトリと身体をくっつけた状態でライの手を再び凝視してきた。