バリアンの砂漠に大きく描かれた…不気味で、歪な円。
黒い点で縁取られたそれをそっと指でなぞりながら、アレクセイは目を細める。

あの赤の国には、一体どんなものが眠っているのだろうか。
そしてそれが目覚めた時、何が起こるのだろう。

…とても、悪いこと。不吉な予感しか無いその大きな円は、徐々にその存在を表に出しつつある。

不幸を運んでくるものであることには違いないのだけれど………何処か、釈然としない。
見れば見るほど、脳裏で引っかかっている疑問は膨らむばかりなのだ。


「………陛下も仰っていたが…どうも、分からんな。ここにこうやって…明らかな敵意を帯びた刃があるというのに………突きつけられているというのに…」

円をなぞっていた指先が、その曲線からそっと離脱する。それはそのまま円の中央…何も無い空白の部分で立ち止まり、指の腹をそっと強く押し付けた。

羊皮紙の中央に、小さなしわが寄る。









「見えんのだよ………その敵意の、“理由”が。………何の箱なのか分かっているのに、その中身が見えない様な………………まるで、がらんどうでも眺めているかの様だ」