そう言えばこの蝋燭も、一度使われた跡があった。状態からして、使われたのは恐らく…つい最近。


………。





「………………いや………まぁ……それはさて置き、だな」

…きっと、このまま単なるラッキーで流してはいけない事だ。ラッキーだが全然ラッキーなんかじゃない。何だかややこしい問題が増えただけだ。誰だラッキーとか言った奴は。俺だった。

…だが、今は考えている時間は無い。レヴィの話に寄ると、この資料室の見回りは無いらしいが用がある時はさすがに兵士が出入りする。
いつ兵士が階段を上がってくるか分からないのだ。厄介事を増やさないためにも早々に終わらせねば。


「…って言ってもなぁ……この紙の山から絞り出すのは、骨が折れるぞ………あー…面倒臭え…あー…」

ブツブツと文句を漏らしながらも、案外働き者の我が手は器用に動く。手元の仄明かりのみで届く範囲の羊皮紙を手に取り、裏表を黙々と確認しては後ろに放り投げていく。

調査記録であるならば、恐らく羊皮紙はそれなりに大量で、束になっていたり纏められているのかもしれない。

あくまで想像だが、なるべく束になっているものを優先してロキは機械的にその作業を続けた。
羊皮紙のほとんどはゴミだったが、中には興味深いものもあり、ロキは思わず手を止めて視線を走らせた。


「………他国の軍事力調査…?…こそこそと色んな調査をしてやがるな…」

いつ何処で入手したのかは知らないが、他国に関する古い調査記録の走り書きなんぞもあった。
軍事力としてどんな戦術を持っているのか、勢力はどの程度か。さすがは戦争大国バリアンとでも言うべきだろうか、鎖国をしていても昔から他国には警戒していたらしい。
箇条書きで羅列する走り書きの単語は、どれもバリアンにいては知り得ないものだ。


「………“狩人”の戦闘能力…極めて大、“禁断の地”への道程………王政復古前のデイファレトの記録か…?………“国境沿いの火山地帯に生息する野獣フェーラ”…具体的な生息数は不明……」