「……当時は分からなかったのですが…半年前、バリアン兵士がこの街に立ち寄ったんです。全員が軽装備で、砂漠越えをするための荷物と馬車しか持ち合わせておりませんでした。何人かは地図を確認していて…。…軍力強化をする一方で、砂漠の調査だなんて……おかしいと思いませんか…?」

「………僕等三槍の隠れ家を探していた…って訳ではないんですか?」

邪魔な三槍を一掃するべく、バリアン国家が隠れ家を探しに兵士を送り込んできたのは過去にも何度かあった。
しかしライ達三槍が潜むのは、広大なエデ砂漠のど真ん中に位置する、地上の真下…蟻地獄そっくりの穴を抜けた先にある地下だ。
万が一ばれても、地下通路は砂漠の至る所にある蟻地獄と繋がっており、いつでも移動出来る様になっている。
細かな迷路となっている地下通路は、道を覚えていないと抜け出せず、場所によっては時間の経過で砂が流れ込み、下手をすれば生き埋めになってしまう、なかなか恐ろしい場所なのだ。

老いと病によって今では思うように身動きが出来ないオルディオも、地の利を活かした隠れ家のおかけでなんとか今まで捕らえられずにいた。
白槍や黒槍の部下達も、別に持っている自分達の隠れ家で息を潜めている。

邪魔な鼠の処理は、まず巣穴を見付けるところから…と、バリアン兵士は三槍の隠れ家を探し続けている。バリアン兵士が砂漠に入ろうとするのは何も不思議なことではないのだが…。

(…砂漠越えのための、必要最低限の軽装備で……砂漠の、調査…?)

訝しげな表情で、ライは首を傾げる。
…兵士の数も少ない。少数精鋭だとしても、こちらのアジトを探しに行くとは到底思えぬ装備だ。
それではまるで、本当に砂漠の調査に行っていたみたいだ。




しかし、何のために今更砂漠の調査など…。







「…何かの準備に備えて…という事だったのかもしれませんが…私には見当もつかなくて…」

「………何かしら企んでいる…もしくは、企んでいた…って事でしょうか……」