真っ白なゲレンデに描かれるシュプールの波を見つめながら自然と彼を探す私がいた。
もう日の落ちた雪の中で凍えながら立ち尽くす。
私の横では、クリスマス・ツリーが幸せそうに煌めいている。
「さむっ…」
どのくらい立っていたのかわからないけど、爪先の感覚さえも無くなっていた。
「どーしたの?さぁ部屋に戻ろうよ」
仲間の一人がなかなかこない私を呼びに来たから、仕方なくゲレンデを後にする。
部屋は暖かくて、優しいキャロルが流れていた。
沢山の友達が気を使って声かけてくれたけど、気分はのらないの。
渡されたシャンパンの泡も、ただ手の中で消えてしまいそう。
『今頃、何をしているの?』
『可愛い誰かと一緒なの?』
みんなの熱気で白くなった硝子に、頬を寄せて浮かんだ涙を隠した。
『なら、勝手に行けよ。どうせ俺は仕事を抜けられないんだよ!』
一緒に来たかったのに仲間の誘いを断れず、あなたを怒らせて1人で来ることになった。
ここにいることを今頃、悔やんでも私は独り。
去年は、二人一緒にいたのに………
もう何もいらない。
あなたの側にいたいの。
明日の朝一番で私を届けよう。
きっとあなたも同じ気持ちだと信じたい。
そうクリスマスの夜には、あなたの胸のなかにいるわ。
=fin=