『わりぃな』
電話口でも手を合わせている姿が見えそうなくらい、必死な声。
「え〜〜ぇ」
私は、やっぱり電話口であいつには見えないのに拗ねて頬を膨らませる。
『バイトなんだよ。7時には必ず行くからさぁ〜。解ってくれよ』
それが、今から3時間前。
本当なら一緒にケーキを食べている部屋で、1人約束を思い出しながら頬杖をついて唇を尖らせていた。
お腹も減ったから目の前のチキンを、ひとつつまむ。
「もう、いつくるのよ……」
独り言を言いながら見た時計は、もうじき10時。
もう少し遅れると、さっきメールが入った。
サンタクロースさん、お願いします。
このイヴに彼と会わせて。
Steady・Ringもまだ、私の指には光っていないじゃないと左手を掲げてみた。
食事は、いつもFirst・Foodばかりなんだよね。と、チキンを眺めた
デートらしいデートなんて、いつだったかしら?と、アルバムを広げた。
そこにある彼の笑顔を見て溜め息をひとつ。
『それでも、彼が好きなんだよね』
そうアイツとなら地味でも許せる。だって好きだから♪
そんなことを考えてる私の耳に、チャイムが聞こえた。
ドアを開けると長身のサンタクロースが、八重歯を光らせながら立っていた。
「待った?」
「もぉー何やってるのよ。Eve、終わっちゃうじゃない!」
そういう私に何故かブイサインな彼。
「バイト、終わってそのまま来たんだよ」
そのセリフを聞いた途端に赤と白のサンタ姿の彼の胸に飛び込んだ。
「バカ……」
涙が、頬を伝う。
「遅くなったな……」
彼は、照れながらSteadyRingを指にくれた。
サンタクロースさん。
ありがとうございました♪
=fin=