長い坂道と大きな教会と小さな公園があるこの街で僕は生まれた。



お父さんとお母さんはとても無口な2人だったけど、とても優しくて一緒にいると温い気持ちになれた。



今日はクリスマスイヴだけど一緒に祝う人のいない僕は小さな公園に独りでいる。



ここにはブランコと滑り台がひとつづつあって、あとはベンチと街灯が2つ、それと小さなパンダの置物がいるから寂しくない。



2つあるブランコの片方に乗ると坂の上の教会がよく見えた。


でも、僕はいつも教会に背を向けてブランコに乗る。



少しだけこいだ時、同じくらいの子ども達が集団と大人達が通るのが見えた。



みんな暖そうな上着を着て、とびきりの笑顔で笑い声が聞こえる。


『これから賛美歌を歌いに行くのかな?僕のお父さんとお母さんも迎えに来てくれるのかな?』


そんなことを思いながらブランコを動かすと、冷たい風が薄い上着を通して肌に突き刺った。



理由はわからないけど今、僕はあの教会に預けられている。


X'masには、沢山の親子連れがくるから僕はあんなところに居たくない。


だから、僕はいつも慰めてくれるパンダくんのところにいる。


「パンダくん、君だけだよ……」


パンダの置物は冷たいけど僕には温くて、いつの間にか寝てしまった。


『わ……わか。和嘉(ワカ)』


名前を呼ばれたような気がして、眠い目を擦りながら見上げると一番会いたかった笑顔があった。


「ん、お…おかあしゃん?」


『おいで和嘉……』


「おとうしゃん!やっと迎えに来てくれたんだね」


会いたかった2人の胸に飛び込むと、とても温い気持ちでいっぱいになった。




そしてクリスマス日の朝、粉雪が地面を白くした公園で冷たくそして暖かい笑顔の男の子がパンダに寄り添うように亡くなっていた。




=fin=