【10256】
そう書かれた扉の前で俺はためらいの拳をにぎりしめていた。
一昨日届いたエアメールには季節外れの海とこの部屋番号が書かれていた。
ここは都内を見下ろせる高層ホテルの最上階で、あいつと過ごした最後の部屋だ。
『どうして今頃……』
腑に落ちない気持ちにカツを入れ、意を決してチャイムを鳴らす。
ドアが開き、長い髪と小さく調った笑顔が俺を中へと招入れた。
「いらっしゃい。寒かったでしょ?」
外の気温と違い暖かなこの部屋で君は、見たこともない鮮やかなドレスに身をまとい俺にほほ笑みかける。
「久し振りだ………な」
コートを脱ぎ捨てると、抑えていた気持ちが行動へと変えていた。
「やっぱり寒かったんだ。身体冷たいよ……」
背中から抱き付いた俺の腕を触り、君は頬擦りをしている。
そんな君の頬に俺の唇を強く押し当てた。
「隆也……」
名前を呼ばれた瞬間、俺の思考は弾け飛んだ。
イルミネーションが映える大きな窓に君の背中がつく。
冷たさに驚いた君のセクシーな表情に俺の感情は理性を失った。
ドレスの裾をたくしあげながら、君の唇を痛い程こじあけその中をもてあそぶ。
久し振りの肌の感触に応えてくれる君が愛しい。
君の背中で降り出した雪がイルミネーションをさらに引き出させる。
「綺麗だよ……」
耳元で囁くと、君は涙声で頷く。
「私を壊して……」
白いシーツの波にルージュのドレスが泳ぐ。
変わらない肌の白さ、ぬくもり、かおり、全てがあの日のままだ。
「愛してる……」
その言葉に君の動きが止まる。
やはり、君は誰かのものになるんだね。
この聖なる夜に俺を選んだこと、絶対に後悔させない。
俺は自分のモノを力一杯、でも最高に優しく君に押し当ててゆっくりと君を掻き回す。
その思いに応える君のなく声が耳に心地よい。
今夜だけは、君のサンタクロースでいてあげる。
結婚おめでとう………
=fin=