――――1ヵ月前。


「ごめんな。俺、来週からアメリカへ出張になった」


「!!」


雑踏街の地下にあるショットバーで男が視線をそらして女にそう告げた。

女は何も言えず、沢山の思考を巡らせながら下を向いた。


男は黙って、テーブルに置かれた女の手に自分の手を乗せる。


「流れるキャロルが違っていても同じ空の下に俺たちはいる……」


男のそのセリフが終わらないうちに女の目から滴が垂れる。


20**年12月24日…。


彼のいない華やいだ街はいつもにも増して賑やかで、イベントを知らせる歌詞があちこちから飛び交う。



仲間たちに誘われたパーティーも途中で抜け出した。


あなたのいないイヴなんてありえないのに、ちゃんと時を正確に刻んで訪れる。


『会いたいの……』


会えない程に気持ちは膨らんでいる自分に気がつく。



気がついたら手に握り締めていたチケットが一枚。


今から旅立てば、日付変更線の向こうはまだ23日のはず………


間に合うよね?あなたと過ごせるイヴに………



あなたの驚く顔がみたいの。


私がサンタになって飛んで行くから、大きな靴下を下げて待っていてください。



あなたの横で朝を迎えられるのは私だけだと信じてるから……



=fin=