*powder snow ~空に舞う花~*



誰かを待ちわびる

そんなコト、今までしたコトない。。



夏休み…莉子からの連絡を待ってる時とは
うまく言えねーけど、なんかが違う。





「だぁぁっ!!」

頭かきむしって勢いよく上半身を起こす。



意味、わかんねえ!!

なんか……むかついてきた!!




今日は寝れそうにない。
昨日も今日もオレの貴重な昼寝っつう至福な睡眠時間をジャマしやがって!!


今日はオレの勝手だってツッコミはNGだっ!!!




制服の左ポケットに勢いよく手を突っ込んで 携帯電話を取り出した。


そして……


「……ふぅっ」


一呼吸して ゆっくり右ポケットに手を入れて
スカイブルーのメモを取り出した。





そのメモに丸っこい字で書いてある数字11文字をを順番に押していく。


「09…0…2…80……」




それにしても……うっせーな…。。



ん、なにが?って???


オレの…心臓だよ!!


さっきから無意味にでっかく動いてやがる…。







『―プルル……』


呼び出し音がした。



そして………





『…もしもし??』





オレの元に届いた


キミの、声。









―ドクンッ


千雪の声を聞いた瞬間、心臓が一度大きく跳ねた。





「あー…、オレ」


開口一番で文句つけてやる…つもりだったのに。

しかも…名を名乗れ。。


オレって…誰だよ。って、自分自身に頭痛すら感じていたのに…




『海斗っ!』

ためらいもなく、オレの名前を嬉しそうに呼んだ千雪。



「…正解」

クイズかっ!!



『連絡してくれたっ』

そんなに嬉しそうに言うな。

きっと今、キミは頬を赤らめてんだろうなって言ったら…自惚れてんなよって笑うか?



「まぁ、お前がワケわかんねーままだし。連絡しろって言われたし。

…仕方なく、だ」

『うんっ、うん』



そんなにクスクス笑うなよ。
オレが…テレて必死みたいじゃねーか。


『それになっ…っ』

それに聞きたいこともたくさんあるんだよ!って言おうとしたら…



『…海斗?』

一転した静かな声。



「な、に?」

『…ありがと。』



ほら、また。
なにも言えなくなる…






千雪と話をしていると調子狂う。

なんなんだって、何度思ったって考えてたって
いつの間にかオレの奥の方にあるのは千雪の事ばかり。


「あーのさ、今日は来ねぇのか?」

『え?』


まただ…なに聞いてんのさ、オレ。。


「昨日いきなり来たくせに、今日は来ねぇのかって聞いてんだよ!!」

『海斗、そんなに私に会いたいの??』

「バッ、バッカ!!!
んなワケねぇだろ!!自惚れてんな!!」



オレが……な。。





『ごめんなさい…』


謝るなよ。。
冗談、に決まってる。
けど、『会いたい』とも答えられないだろ。。



「…今、家か??」

『えっ。あっ…』

「ん?」

『うぅん!なんでもない。そうだょ、家でのんびりしてたんだぁ』

「いい身分だな」

『海斗こそまた授業サボってるくせに~』

「まぁな」





…この時、何気ない会話だったのに少しためらった千雪の言葉の意味を

オレはどうして気づいてあげる事が出来なかったんだろうな…。



今でも
後悔しているけど



もし気づくことが出来て、その疑問を問いかけていたら
この時のキミはオレにどぅ答えてくれましたか…?






そんな『もしも』なんて考えたってどうしょうもないことくらい分かってるけど

後悔してる今は


そんな『もしも』を…考えてしまう。





オレはキミの隠し続けた真実を

見つけだして

キミを守ってあげたかった。




そうすれば


幸せへと続く道を手をつないで歩むことが出来たんじゃないかって…






こんなオレを自惚れだとキミが笑うのなら

少なくとも…




オレたちの未来はもう少し違うものに変わっていたんじゃないかって……。




そう、思うんだ。




―キーンコーンカーンコーン♪♪



「……」


終礼も終わり、今日の最後のチャイムが鳴った。

教室に戻っているオレは、チャイム音が鳴り終わるとそそくさと軽いカバンを肩にひっかけて

足早に教室を後にした。




「えっ、海斗!?帰るの???」

そんなオレを見て急ぐように背中から呼びかける声は、もちろん…莉子。



「あー、今日はちょっと…な」

振り返って、あいまいな言葉を返す。

「なんか予定あるの?」


ごめんな…こんな時にも莉子には、言えない事ばかり。


約束、したから…アイツと。。



「大悟にも先帰るって伝えといてな。

じゃーな。また…」



本当に、ごめんな。




学校から一番近い駅まで徒歩25分。



駅まで続く道を歩いている時、ショーウィンドウに映る姿をパッと見て

思わず髪を触る。




「なにしてんだ…オレ」

ハッと我に返って整えかけた前髪から手を離した。





オレの家までは電車なんて乗らない。

すんげー逆方向ってやつ。




けど…

今日は行かなくちゃいけない理由がある。