「私はアナタの事、知ってるよ??」
言ってることがメチャクチャなオレに
ついさっきの笑顔でニコリと微笑えんでくるから
ほら、その顔を前にしたら
また何も言い返せなくなる。
「アナタは~
ココ、青葉高校2年の
朝日奈海斗(アサヒナ カイト)クン。
得意なスポーツは水泳!!」
なんだ、コイツ。。
当たってるし。
「あー、どっかで会ったっけ??」
コンパとか??
バイト先のコンビニにもいないよな……多分。
「私の名前は~、日向千雪(ヒナタ チセ)です!!
ちゃんと覚えてね」
ヤッパリ、聞いたことナイ名前だぞ……多分。
「おい!オレの質問に答えろよな!!」
「どぉせ言ったって覚えてないクセに~」
う゛……。
コイツ性格最悪かも。
他にも聞きたい事はたくさんあったんだ。
ヤッパリどこで会ったのかとか、
オレが中庭で昼寝してんのがどうして分かったのかとか、
千雪はどこの学校なんだよとか、
ホント、色々ツッコミ所がいっぱいあったのに
ニコニコ笑ったり、
いじわるく頬を膨らませたり、
子供みたいにコロコロ変わる表情を見てたら
それだけでそんな事聞く事がどうでも良くなってくるんだ。
オレの中では会った記憶がないコイツにどうしてこんな感情になるのか
意味が分かんなくて
こんなヤツほかっとけばいいと思うのに
それでもやっぱり
だんだん、コイツの「お願い」がなんなのか気になってくる。
「で、オレに『お願い』ってなんなの!?
めんどくせー事ならゴメンだぞ」
結局、自分から聞いちゃうんだオレ。。。
「聞いてくれるの~??」
頼むから…
そんなに分かりやすく嬉しそうな顔すんなよ。
「かっ、勘違いすんなよ!?
叶えるとは言ってねーからな!聞くだけだよ、聞くだけ!!」
そう、聞くだけ。
「あのねー……
「1週間だけ、
私と付き合って」
「……はぁぁぁぁ???」
やべっ、顎はずれるかと思った。
でも、オレのリアクション間違ってないぞ!!
多少、声がデカすぎたくらいで。。。
「あのさぁ…」
冷静に…
冷静に……
真意を問う。
「なになに??」
問う相手は…
はぁぁ…、なんでそんなに目がルンルンしてんだよ。。
「お前、なに言ってんのか分かってる!?」
絶対分かってねーだろ。
「分かってるよ~。
付き合ってってお願いしてみたんだけど…ダメだった??」
何を言ったか分かってるらしい…って、おい!!
「ダメだった~?じゃなくてだなぁ!!」
いかん…
なにムキになってんだオレ。
「だからぁ~、
お前の言ってる事、意味わかんねーよ??だって…」
説明してたら…
「ち~せっ!!!
『お前』じゃなくて、!
私の名前は千雪っ!!」
最後まで人の話を聞けよなぁ…。。。
「ハイハイ、千雪ね」
「うん!!」
「よーく考えろよ??
千雪が言ってる『お願い』ってのは
あー、
あれだ 、
その、
あの…だな」
『オレに対する告白ってのだろ!?』
なんて…自分で言えるか!!!
「告白、してみた…つもりなんだけど??」
やっぱり、そぅらしいです…ハイ。
「だっ、だからぁ!!
付き合ってって、オレはお前の事なにも知らねーわけ。
だから、いきなり付き合ってお前…じゃなくてー、千雪だってイヤだろ??
んで、さらに
一週間ってなんだよ!?意味分かんねーよ」
「海斗クンって…付き合う事に対して、
お互いの事よく知ってから~とか、そんなにマジメに考えてくれるんだ」
そんなとこに感心しないでください。。。
そりゃぁ、普段はお互いの事~とか、そんな事全く考えねーし、
楽しければそれでいぃよなって感じだけど、
あまりに唐突すぎて
ちょっとビビったっつーか。。
「1週間ってのはなんなの??」
学校は授業中。
中庭はもちろんオレら以外は誰もいなくて
オレらが口を開かなければ
耳に届くのは
どっかのクラスの授業で使ってる音楽室から
かすかに聞こえてくる題名も知らない音。
まだ4月。
春の風が中庭にあるすっかり葉桜になった木の葉を気持ち良さそうに揺らす音。
そんな一見穏やかな日の中で繰り広げられてる
ドタバタ劇場…か!?