先生は窓辺に寄っ掛かりながら、窓の外を眺めていた。
「先生」
そう呼んでも振り向いてくれない。
…どうして?
不安だけが積もっていく…。
「お疲れ様」
「…え?」
「良く頑張ったな。一番後ろから観てたけど、声も通るし歌も良かったよ」
先生が誉めてくれているのに、ちっとも嬉しくなかった。
だって外を見たまま…私を見て言ってない…。
…どうして見てくれないの?
…私、何かした?
…こっち向いてよ。
「ほら、後夜祭始まるみたいだ。文化祭終わっちまうんだな。柏木、楽しかったか?」
ほら、また私に話してるのに私を見ない…。
…そんなに外が好き?
…そんなに私を見たくないの?
「楽しくない」
だめ…我慢しなきゃ。
「全然楽しくないよ!」
「…柏木?」
やっと振り向いた先生。でも、もう私には手遅れだった…。
「何で私を見て話してくれないの?何で避けるの?呼んだのは先生の方なのに、何で私がこんな思いしなくちゃいけないの?」
違う…こんなことを言いたい訳じゃない。
涙が止まらなくてドレスを濡らしていく。
「先生と付き合ってから初めての文化祭で楽しみにしてたのに…私だけだったんだよね」
違う…これも違う。
「柏木」
近づいてくる先生。
「こないで!!」
咄嗟に出た言葉。
それは…初めての拒絶だった。