舞台の証明がおちて、暗転する。
「頑張ってね」
暗転の最中に装置をセットして私も舞台上で待機する。
はぁ…緊張する。
私は大きく深呼吸をして、自分に明かりが降り注ぐ瞬間を待つ。
【窓から彼に思いを馳せるお姫様は、ある事を思いつきます。会いに行って思いを伝えられないのなら、歌で伝えよう、と。お姫様は小さい頃から透き通った天使の歌声と城の者に誉められ、彼女も歌う事が大好きでした。彼女は窓を開け、こう願いました…】
三枝ちゃんのナレーションが終わり、私に照明の光が降り注ぐ。
「この歌が届くか分からないけど、どうか…彼の元へ届けてください…」
私は大きく深呼吸をして心を落ち着かせる。
この歌が皆に、お客さんに…そして、先生に届きますように。
【声をきかせて私に微笑んで
あなたを思い出しては切なくなるの
会いたい気持ちは大きくなるばかり
あなたはこんな私を見て呆れ笑うのかしら
今すぐ駆け出してあなたの傍に…
この思いを全て
歌にのせてあなたに届けよう
頬を伝う風が優しく包んで運んでくれるから
愛するあなたに届いてほしい】
…どうかな。
辺りは重い静寂。
…やっぱりダメだったの?
その時…
辺りから割れんばかりの拍手が私に向けられる。その音色は止むどころか益々、盛り上がる。
私は客席に向かって静かにお辞儀をした。
それから、劇は無事にお姫様が彼に会いに行く事を許されるというハッピーエンドを迎え、無事に公演は終了した。