三枝ちゃんは深呼吸を一回して静かに言った。



「…澪、お願いします」



周りの視線が一斉に私の方に向く。



「…え、わたし?」



驚くべきことに、三枝ちゃんの口から出てきたのは私の名前で…。



「そう。澪にやってほしいの」



私みたいだって思っていたお姫様を私がやるの…?



「心さんがね、澪の歌声は透き通っていて聞き惚れてしまうくらい素敵だし、澪なら切なさも表現できるはずだからって」



昔、一度だけ孤児院の劇で歌ったことがあるけど、その時は心さん何も言ってなかった…。



「だめかな…?」



私にそんな大役が務まるのかな…?



ふと、誰かの視線を感じて前を見ると優しく微笑む先生と目があった。



いつか私に先生は言ってくれた。



-どんな時もまずは挑戦してみる-



「澪…?」



三枝ちゃんの不安そうな声で決意した。



「私で良ければ、頑張ってみるよ」



まずは挑戦してみよう。結果なんて後から付いて来るもの。



三枝ちゃんの頑張りに応えてあげなくちゃ…。



「ありがとう、澪」



それから思っていた以上にキャストは早く決まり、明日から早速、練習や道具を作る事になった。



もちろん、皆に心さんの説明も協力してくれることも話した。