文化祭まで残り一ヶ月を切った。
今日は三枝ちゃんが心さんと考えた台本が発表されるんだって。



「皆、静かにしてー!私達が文化祭でやる劇の台本を発表するよ!」



三枝ちゃんは心さんのアドバイスを聞いて台本を完成させた。



「…今回はね、切ないけど純粋な恋の劇にします。劇といってもミュージカルに近くなります。どうかな…?」



一瞬、静まり返ったクラスのあちらこちらから拍手の雨…。



「ありがとう、皆!それじゃあ、台本配るね」



三枝ちゃんから配られた台本に目を通す。



小さな国のお姫様が貧乏な農民の男性に恋心を抱いてしまう。しかし、一国の姫であるため会いに行く事も出来ずに一人毎日、彼の住む所を窓から眺めては思いを募らせる…。



「なんか澪と先生みたいだね」



沙織が小さい声で私に言う。



私も読んだ時に思った。付き合う前の私みたいだって…。



先生も台本に目を通している。



…ねえ、先生はどう感じてる?



「お姫様のキャストは歌を一曲歌ってもらいます。透き通るような歌声で切ない恋心を表現できる人になってほしくて、実は…このキャストだけ私の中で決めています…。だから、お姫様のキャストだけ私に一任してもらえませんか…?」



緊張した三枝ちゃんの姿とは裏腹にクラスからはまたもや拍手の雨。



「本当に何もかもありがとう…。じゃあ、お姫様のキャストを発表します」