「本当はいけないって思ってたんです。」


霜崎くんの肩が震える。



「柏木さんに彼氏がいることが分かって諦めようって思ったけど諦めたら自分が空っぽになりそうだった。これ以上、好きでいても叶わない事も分かってた。でも・・・。」



そっか・・・。


霜崎くん。


私、分かったよ。



「泣いてもいいんだよ。」



霜崎くんは泣けなかったんだ。



失恋しても泣けなかったんだ・・・・。



「泣いてもいいんだよ・・・。霜崎くんが泣き終わるまで、こうしてるから・・・。」


私は小さい子をあやすように
霜崎くんを抱きしめ背中をさすった。



15年も同じ人にずっと片思いをして、やっと会えたらその人にはもう大切な人がいて・・・。


どんな気持ちなんだろう・・・。



私には想像が出来ない世界。




「柏木さん・・・。」



「なに?」



「少しだけお借りします・・・。」



「どうぞ。」





霜崎くんは子供のように大きな声で泣いた・・・。



まるで、15年分の想いが全て溢れ出したように・・・。