「欲しいのか? ずうずうしい奴だな」

 僕の意見なしですか!? な理不尽な。これ以上付き合うのも面倒なので席を立つ。

「どこ行く気だ?」

「帰ります。挨拶も済んだんで用もなくなったし」

「つれない事いうなよ。お前にしか青山を頼める人間はいないんだって!」

「私は誰の力も借りずに生きていけますけど?」

「青山!!」

 また怒鳴る。けれど今の怒鳴りは話を戻すなの意味をこめてだろうけど、僕としてはナイスと拍手を送りたい気分だ。

「失礼します」

 出口に向けて歩き出す。

「永倉!」

 呼ばれて後ろを振り返る。驚くことに、先生が土下座をしてまで頼みごとをしていた。僕は言いたい事も喉元に押し込め、なぜだか青山を見た。青山は、変わらぬ表情で感情を出さずにいるだけ。けれど、その瞳は先生を映し、悲しみの色を浮かべている。青山も言いたいことが有るだろうが、僕と同じで何もいわずにいた。

「永倉、一生の頼みごとだ。青山を……頼む!」

 それは僕のときには見れなかった秋本先生の一面。自分の過ちだと思い、責任を感じ、自分の覚悟を相手に伝える。
 受け取る僕は責任を背負う事になるのだろうか? 秋本先生の覚悟も、青山の意思も、僕の決意も、全て。荷が重過ぎる。僕なんかでは支えきれるものではないだろう、今までの僕がそれを指すのだから。

「先生、それでも僕は―――――」

「何で俺がお前に頼むと思う?

「……それは」