「もう、6限目…」

朝、悠から来たメールを
思い出してそわそわし出す真樹。
そんな真樹の様子を杉崎は
面白くなさそうに見ていた。

「…何か用事でもあんのか?」
「え、いや、
幼馴染みと帰るだけですけどっ」
「?」

幼馴染みと帰るなんて
いつも通り、日常のこと。
何故今日に限ってそんな
何か期待しているような
態度を取っているのか。
…嫌な予感がした。

「…告白されたか?」

半分冗談、半分本気で
軽く聞いてみた。

真樹は杉崎の言葉に
顔を赤く染めた。

まさか本当に…と
杉崎はショックを受ける。
しかし真樹の口から
続いた言葉は、
自分の想像したものではなかった。

「そんなわけないじゃないですか!
ただ、その、大事な話があるって…」

想像したものとは違えど
時間の問題であることを
理解した杉崎。

ならば無理矢理でも、
一瞬頭を過る悪い考え。


「せんせ…?」

質問してきた割に
さっきから何も反応しない
杉崎に疑問を感じた真樹は
ゆっくりと杉崎に向かい
手を伸ばす。

しかしその手は
パシッと杉崎によって
動きを奪われた。

「……」
「ぇ、…っきゃ!?」

掴んだ真樹の腕を
ぐいっと自らの方へ
引っ張る杉崎。
それによりバランスを
崩した真樹は
杉崎の胸の中に
倒れ込んでしまうハメに。


「せ、せんせー…!?」

頬を赤く染めて
上を見てみれば
いつもみたいな
フザケさ空気はなく
真剣な〝男〟の表情をした杉崎。

真樹はどきりとした。

慌てて俯き、
掴まれた腕を
どうにか逃がそうと
力を入れて抵抗してみる。

しかし所詮、女の力。
大人の男の力に勝てる
訳もなく。

「杉崎、先生…離してください…」
「…彼方だ」
「え?」


思わず俯いてた顔を
上げてしまった真樹。