「あたしと彼女と
同時に付き合ってよ。
1ヶ月以内にあたしが悠を
振り向かせることできたら
彼女と別れてよ」

にっこりと目の前で笑う
この女の意図が掴めない。
そんなこと思いながら
悠は美羽の誘いを断る。

「俺にはそんな真似できない」

「でもあたしのこと
よく知りもしない相手に
振られるなんて嫌なの」


強気な美羽は
食い下がる気はないらしいが、
悠もさすがにこれは
承諾するわけにいかない。


「悪いけど、俺は
アイツが大事だから無理」

「無理っていうのが無理」
「はあ…?」

どんなに断っても一歩も
引き下がろうとしない美羽に
悠はだんだん苛々としてくる。


もう殴ってでも
美羽を黙らせようかと
考えた瞬間、
美羽の唇が動いた。


「わかった。
付き合わなくていい」

「はぁ…」

「でも今日から1ヶ月間だけ
放課後をあたしに頂戴よ」


少し不安を抱いてる
でも強気な美羽の目に
悠は一瞬口を紡ぐ。

「1ヶ月、放課後だけでいい」


これ以上は譲れないという美羽。

1ヶ月も真樹との時間を
奪われるかと思うと
やっぱり嫌気が注す。

でもこの1ヶ月を乗り切れば
それからずっと
邪魔をされないということと
これ以上話を続けても時間を
無駄にするだけだと思い、
悠は深い溜め息をつくと、


「今日は外せない用があるから
明日からでいいなら…いいぜ」

と承諾した。

美羽は表情を明るくさせ、
ありがとうと言って去って行った。


悠の頭の中は真樹のことだけ。
この決断が今の最良の方法だと思った。


でも、これが
歯車のズレの始まりだった。