「あたしが男だったら…」

美羽の不審な呟きに
真樹は首を傾げ、
杉崎は耳を傾ける。

そんな2人…というか
真樹を見て美羽は苦笑した。


「あたしが男だったら、
真樹ちゃんと付き合えたかもって」
「えっ?」

真樹は驚き目を見開き、
杉崎はただ首を横に振った。

そんな2人の反応を
無視して美羽は
携帯をカチカチ弄りだす。


「あ、の…」
「ん?」

「…失恋…とか?」

真樹の的確な質問に
カチカチとボタンを
押していた指が止まる。

美羽は携帯画面から
目を離さずに小さく
そうだよ、と呟いた。


小さな沈黙が訪れる。



「…話、聞きますか?」


それを破ったのは
真樹だった。

普段は美羽が話を振って
真樹が相槌を打ち、
美羽が喋らなくなったら
真樹も黙ってしまう。

それが今回、
初めて真樹は
自分から美羽に
話し掛けたのだ。

その事実に驚いたのは
美羽ともう一人、杉崎。

携帯画面から目を離し、
真樹を見て何も言わない美羽に
真樹は焦り出す。


「ご、ごめんなさいっ!
そういうことって誰に話すと
結構早く立ち直れるかなって…」

目をぎゅっと瞑り、
肩が震えている真樹。
それを見て杉崎が
手を伸ばそうとした。

しかしそれは
美羽によって阻止された。


「真樹ちゃん」
「…っ…」

まだ力の入っている真樹を
優しく撫でる美羽。



「ごめん…
嬉しすぎて一瞬思考
回んなかったの…」

瞑った目を恐る恐る開き
目の前の美羽を見る。

とても穏やかに
微笑んでいてほっと
胸を撫で下ろす真樹。

それを確認して
真樹から手を離すと
美羽はいつもと違う
ちょっと弱々しい表情と
声で口を開いた。

「よかったら
聞いてくれる?」