「ねぇ、いいの?」


休み時間になり、
教室が騒がしくなると同時に
とある女子の机の回りに
明るい色の頭が集まる。

その囲まれた女子は
持っていた携帯を
パチンと閉じて
その集団を一瞥し
溜め息を吐く。

「…なにが?」

何となくわかっている
質問の内容だが、
主語がなかったので
わざと聞き返す
ハニーブラウンの少女。


「何がって…
ずっと好きだったんでしょ?」

キラキラと飾られた
携帯がなんだか虚しい。
そんなことを思いながら
飾られたネイルを見て
ハニーブラウンはまた
溜め息を吐いた。

「仕方ないじゃん?
告白しなかったあたしが悪いし」

顔を俯かせる時に
シャン、と耳元で
金属が重なる音が鳴る。

耳が重いな、なんて
どこか他人事に考えて
いるのだろうか。

「仕方ないって…
悠くんのこと諦めるの?」

短いスカートを揺らし
首にかかった細くて長い
ハニーブラウンの髪を
弄る茶色い髪の女達。


「…髪、触んないでよ…」


小さな抵抗を見せる
ハニーブラウンの少女。
茶髪達は笑いながら
上辺だけ謝罪をする。

「でも美羽の髪って
ホントきれーだよね」

美羽と呼ばれた
ハニーブラウンの少女は
静かに立ち上がる。

「気分悪いから
保健室行ってくるわ」

「え、あ、ちょっと」

その言葉を全て聞く前に
美羽は教室の扉を閉めた。