学校の近くまでくれば
妙に視線が痛く感じる。
耳を済ませば噂する
小さな声達。

そんな空気に
耐えられなくなった真樹は
小さく声を上げる。

「ゆ、悠っ」
「何?」
「…恥ずかしいん、だけど」

ただでさえ小さい声が
語尾に向かって更に薄くなる。

そんな真樹が可愛くて
悠は意地悪く笑った。


「俺は恥ずかしくない」


何やらキャラが変わって
しまった悠の言葉に
また頬が熱くなるのを
感じた真樹は小さく唸る。


「…いじわる…」
「そんなんじゃねーよ」

真樹は不満そうに
ブツブツ呟いているが
内心嬉しくて堪らなかった。

悠の対応の変化が
本当にただの幼なじみから
恋人に変わったんだと
分からせてくれるから。

手を繋いで登校することが
こんなに恥ずかしくて
こんなに幸せだとは
思いもしなかった、と。

真樹は小さく笑う。


下駄箱で靴を替える間も
離されることがない手。

でも、
もう離さなければいけない。