呼び掛けにも応じてくれない
少し後ろにいる悠に
ちょっと不安を感じる真樹。

悠の表情は
逆光でよく見えない。


「ねぇ…」
「好きだ」


一瞬、頭が真っ白になる。
好き?本当に?
期待していたことなのに
信じられないという疑心が
真樹を襲う。

そんな真樹を見て
悠は何を思うだろう。

自分が立ち止まったことから
出来た距離を埋めて、
真樹をぎゅうと抱き締める。

「ゆ、う…」
「いつからか分からないけど
もうずっと前から好きだった」

そう言葉にする悠の腕に
更に力が籠る。

「真樹…俺と付き合って?」

力が緩まった腕。
顔を上げれば
真剣な表情の悠。

それを見れば
嘘じゃないんだ、と
理解する脳。

「あ、あたし…も…」

気持ちに応えようと
口を開くと歪む視界と震える声。
嬉しすぎて泣くって
本当にあるんだと
どこか他人事のように思い、
流れそうな涙を隠したくて
自ら悠に抱き着く真樹。


小さく深呼吸。

ふぅ、と息を整えて
ゆっくり顔を上げて
ふんわり微笑む真樹。


「あたしも、
ずっと悠だけが好き」


その言葉を聞いた悠は
一瞬目を見開いたあと、
愛しそうに微笑んで
ありがとうと呟いた。


「…すごい嬉しい、真樹」

「うん、あたし…も…」


そう互いに言った後
重なる2人の影。

ちゅ…と離れる際に
聞こえたリップ音に
2人は照れ笑い合う。


「これからも、よろしくね?」

「もち。幸せにするから」


手を繋いで並ぶ影は
幸せそうに家路につく。