今年の春、俺は小波高校に入学した。

頭の悪い俺が、苦手な勉強をがんばってこの学校に入った理由は、一つだけ。


幼なじみであり、彼女でもあるゆいと一緒に居たかったから。




中学3年の夏、

ゆいも頭が良くないのは知ってたので、それなりの高校に行くのだと思っていた。

だから、休み時間に言われた

「やっぱり小波高校にする!」

・・というゆいの発言に俺は、驚きが隠せなかった。
なぜなら、少し前までは、お互いのレベルに合った学校を受けようねって、ゆいが言ってたのだ。


なのに、いきなりそんなことを言われて、俺は裏切られた気分だった。


なんでだよ・・。


大体ゆいが小波高校に受かる訳ないじゃんか。


俺と一緒の高校に行きたくないから、とかだったら・・俺・・・。



考えている内に、どんどん暗い思考に陥っていく俺に気付いたのか、ゆいが心配そうにこっちを見ている。

すると、

「大丈夫だよ!拓也も小波高校に行けるように、一緒に勉強がんばろ?」


「・・・俺もかよ」


遠ざけられてるんじゃないと安心したが、まさか俺まで小波を受けさせられるのか?


「私、拓也と同じ高校に通いたかったんだけど・・。無理にとは言わないよ」


ゆいの表情が曇った。


ゆい・・・。

そんな顔すんなよ。


ゆいの居ない高校生活を過ごすくらいなら、俺は・・。


「無理じゃない。がんばろうぜ」


何だってがんばれるから。


ゆいの表情が明るくなった。

「ありがとう!!・・それと、ごめんね」


「ほんと、いきなりだよな」


「ちょっと理由があってね。えっと・・また今度話すよ」


ゆいは教室だと言いづらいのか、なんだかよそよそしかった。


「ん。また教えて」



そんな感じで、俺達の進路は小波高校受験へと決まった。

・・同時に、勉強漬けの日々が始まったのだ。