漫画の回し読み、クラスや学年男子でだれがカッコいいか、今日の数学の宿題、読者モデルのだれだれがかわいい……。

そんな話は、中学の時にだってあった。いまいち。だって、それって高校生じゃなくてもできる話でしょ。

高校生になった。それを謳歌したくって、楽しみたくって、しょうがない。……と、言葉にすれば簡単だけど、具体的に、高校生を楽しむってどうするんだろう。

青春する? 部活に打ち込んで。将来の夢に向かって。勉強は……まあいいや。

だけど、私は帰宅部だし。将来の夢ったって……お花屋さんになりたいとか言っていたのは、小学生の頃。いつのまにか、どうしてもお花屋さんになりたいかといわれれば首をひねるようになり、いつのまにか、お花屋さんが夢だと言うのがなぜか恥ずかしくなり、いつのまにか、お花屋さんは夢じゃなくなっていた。

代わりの夢ができたわけでも、ないのに。

高校生になって、じゃあなにを楽しもうか。迷ってはいた。というか、そもそもどう楽しめばいいのかわからなかったから、迷っていたというのも違うか。

悩むこともできなかったし、意味ったって、そうそう見つからなかった。せいぜい、先生に怒られないように宿題やって、忘れたら友達に見せてもらって、校則に引っかからない程度に、ちょーっとスカートを短くしてみたり、そんな感じ。

張り合いっていうか、刺激っていうかが、抜けてた。

中学を卒業した時にはもっと、あれがしたいこれがしたいって憧れがあったのに。

いつのまにかお花屋さんになりたいという夢が風化していったみたいに、その憧れも少しずつ、輪郭の端から砂みたいに崩れていく。

「こんなもんなんだ」という諦めが、溜め息と一緒に漏れた。